代表取締役 上能 喜久治
“対馬丸”を知っていますか?
今冬は暖冬という当初の予想に反して厳しい寒さと大雪に見舞われています。日本全土が寒波に見舞われていた12月中旬、研修で沖縄にいました。その泊まっていたホテルから歩いて5分ほどのところに「対馬丸記念館」というのがある、というので見学に行きました。対馬丸というのはいつかどこかで聞いた気がしますがはっきりとは覚えていません。その記念館は決してわかりやすい場所になく、私が行ったとき、入場者は私以外にたった二名でした。そのおかげでゆっくりと見学でき、深い悲しみと大きな憤りを覚えました。
対馬丸は大東亜戦争末期、沖縄決戦が近いので多くの小学生を疎開のために九州に運んだ日本郵船の船です。
昭和19年8月21日に1788名を乗せた対馬丸は那覇港を出港し九州に向かいましたがその途中、アメリカの潜水艦に撃沈され多くの幼い命を奪いました。記念館には数少ない遺品が展示され、子をなくした親や助かった生存者が語る話をビデオで見ることができます。その話を聴きながらあふれる涙を抑えることができませんでした。この記念館が対馬丸事件を決して風化させることなく理解を深める役割が大きいことを知りました。
会社の沿革を伝える
私の父は大正3年生まれで母と結婚してすぐに召集され北支にいました。父が元気な頃はよく戦争の話をしてくれましたが残念ながらその父は他界し、今は戦時中の話を聴くことができません。しかしその父から伝え聞いたことを私の子や孫に伝えていくことが私の使命である、と思っています。「おじいさんは日本の国を守るために命を懸けて戦ってきたすばらしい人である」と誇りを持って子孫に語ることが私の大きな使命です。
それと同じく、経営者であるあなたの会社の沿革を社員に語り継いでいくことはあなたの大きな使命です。松下電器産業の本社内には松下歴史館があり創業時の様子が人形等でリアルに再現されています。それを見ることにより創業時の想いが理解できるのです。あなたが二代目・三代目なら創業者や先代の写真を掲げたり胸像を作ってください。その前であなたが会社の沿革を熱く語ってください。そのことで今、わが社があるのは創業者や先代のおかげであることが社員や取引先の人々に深く理解されます。
当社では毎年、新入社員研修の初日に当社創業の地を訪れ、その地に向かって一列に並びみんなで一礼をします。当社も最初は六坪の事務所から始まったことが理解できるのです。国の歴史を知ること、会社の沿革を伝えること、自分のルーツを知ることが日本という国への誇りを持ち、会社への帰属意識を高め、祖先への敬意につながっていきます。
今年があなたと貴社にとってすばらしい一年でありますよう祈念申し上げております。