代表取締役 上能 喜久治
採用しない企業が悪いのか?学生の質が低いのか?
今春卒業予定者の就職内定率が史上最低の57.6%(平成22年11月末現在)である、と報じられ、新卒者の就職の厳しさが浮き彫りになりました。そしてテレビや新聞等のマスコミと共に政府までもが新卒者採用数を減らした企業が悪者扱いにされています。毎日、多くの中小企業の経営者と接している私から見れば“バカなマスコミ”であり“アホな政府”に写ります。昨今のような厳しい経営環境下であっても多くの中小企業は若さとやる気にあふれた新卒者を採用したいと思っています。しかし残念ながら学生はそのような中小企業には見向きもせず、大企業や公務員志向が強くなっています。30名にも満たない当社に応募してくる学生との面接時に「どんな人生を送りたいか?」と尋ねると「平凡な人生」「安定した人生」と答える学生が多くいます。そう思っているから少しの困難やちょっとした問題に直面するとそこから逃げようとするのです。その困難や問題から逃げることなく、避けることなく、乗り越えれば大きな自信と成長した自分がそこにあるのに・・・。
当社の内定者訓練は5日間あります。昨年の内定者訓練で、一人の女子内定者が2日目の朝、「内定を辞退したい」と申し出てきました。「私が思っていた会社と違う」というのがその理由でした。「誰かに相談したの?」と聞くと「同い年の彼に相談しました」「その彼は何と言っているの?」「“いやだったら辞めたら”と言いました」「親には言ったの?親は何と言っているの?」「“気をつけて帰っといでや!”と言っています」この事件を契機にして当社の新卒者採用は約15年間にわたる幕を下ろしました。
心身とも強健な人材を送り出す提言
私が総理大臣なら内定が決まっていない学生に向かってこう訴えます。「希望者に限り、自衛隊で2年間、君たちをみっちりと鍛えます。そして2年後に逞しくなって世に送り出します!」それとともに経団連等の経営者団体に向かってこう訴えます。「2年後に心身とも逞しくなった若者を輩出します。ぜひ、このすばらしい若者たちを採用してあげてほしい!」と・・・。
憲法を改正することもなく、少しの予算を計上するだけで国を愛し、知識と技術と意欲を持った若者が増えるのです。
今、政府は各種の補助金・助成金・税額控除等で雇用を確保しようと躍起になっています。しかし、この“お金で解決”しようとするその姿勢・考え方は何ら学生の意識を改善することも意欲を高めることもありません。いや、むしろ“もらえるものならもらわなければ損”という風潮を助勢し、それが生活保護所帯数の増加等にも繋がっています。安直な政治家が安直な政策を掲げ、安直な国民を生んでいきます。崇高な理念のもとにすばらしい政策を実行していくことがすばらしい日本人、りっぱな社会人を育てていきます。